OEMの利益率・原価率は?業界別相場と変動要因を解説

OEMビジネスでは、どのくらいの利益率が見込めるのかが重要なポイントになります。
業界や製品の種類によって利益率は大きく異なり、高付加価値な製品では高利益率が期待できる一方、大量生産が中心の業界では利益率が低くなる傾向があります。
本記事では、業界別のOEM利益率の相場や、利益率を左右する要因、収益性を向上させるためのポイントを詳しく解説します。OEMを活用して事業を展開する際の指針として、ぜひ参考にしてください。
目次
OEMの利益率はどのぐらい?
OEM(OriginalEquipmentManufacturer)は、他社ブランドの商品を設計・製造するビジネスモデルです。新しい商品を効率よく開発できるものの、どの程度の利益率が見込めるのかが重要なポイントになります。
OEMの利益率は、業界や製品カテゴリーによって異なりますが、一般的には10%〜50%の範囲です。この差は、製品の付加価値や生産規模、販売方法によって変わります。
例えば、化粧品やIT関連のような高付加価値分野は利益率が高めです。一方で、食品や自動車のように大規模な市場では、比較的利益率が低くなる傾向があります。
また、OEM製造を行うと原価率が高くなるといわれていますが、自社工場での生産と比較しておおよそ10〜20%ほど高くなります。しかし、自社工場を構えるには膨大な初期投資が必要なため、OEM製造がかならずしも原価が高いとは言えません。
業界別にみるOEMの利益率・原価率の相場
業界や製品の特性によって、OEMの利益率には大きな差が生じます。化粧品業界は高利益率が期待できる一方、食品業界や自動車業界では、大量生産によるコスト削減で利益を確保する仕組みが主流です。
ここでは、主要な業界ごとのOEM利益率について詳しく解説します。
化粧品業界
化粧品業界の原価率は10〜20%が一般的です。OEMの利益率は20%〜40%が相場ですが、高級ブランドでは50%を超えることもあります。一方で、小ロット生産を行う場合、OEMを利用する企業の利益率は5%前後、もしくはそれ以下になるケースもあります。
例えば、高級スキンケア製品は少量生産でも高価格で販売できるため、収益性が高いです。一方、大衆向けの製品は販売数を増やして収益を確保する手法が一般的です。
アパレル業界
アパレルの原価率は、一般的に30〜50%程度とされています。OEM利益率は、35%〜55%が平均的な範囲です。自社ブランドとして販売する場合は60%〜70%の利益率を確保できることもあり、OEMを活用してブランド展開を進める戦略が有効です。
OEMで自社ブランドを展開すれば、利益率の向上とブランド価値の向上の両方が期待できます。
食品業界
食品業界では、OEMが冷凍食品やスナック菓子の製造で広く活用されています。この分野の利益率は10%〜30%と比較的低めです。保存性や安全基準の厳格な管理が必要なため、追加コストが発生しやすいことが影響しています。
食品OEMのなかでも、冷凍食品のOEMでは大量生産によるコスト削減が重要です。しかし、高付加価値の冷凍食品を製造することで競争力を高め、利益率の向上を図ることも可能です。
おまけ:AmazonOEMの利益率は高いのか?
最近では、「AmazonOEM」というビジネスモデルが注目されています。AmazonでOEM製造したオリジナル商品を販売する方法で、OEMを活用したEC販売の手法として人気があります。
AmazonOEMの利益率は、30%〜50%と比較的高い傾向にあります。副業として行われる相乗り販売や単純転売と比べても利益率が高いのが特徴です。ただし、50%の利益率を確保するためには、原価を抑える工夫が必要です。多くの企業が、日本国内ではなく中国輸入を活用して低コストでOEM生産を行っています。
利益率に影響する要因
OEMの利益率は業界以外にもさまざまな要因によって変動します。利益率を高めるには、製品の種類や市場特性、生産規模、契約条件などを総合的に考慮することが重要です。
OEM製品の種類と市場特性
OEMの利益率は、製品の種類によって左右されます。
●高付加価値な製品(化粧品・IT機器など):高価格帯で販売されることが多く、利益率が高め
●低付加価値な製品(食品・日用品など):大量生産されるため、利益率が低くなりやすい
食品や日用品では、販売数を増やして収益を確保する戦略が求められます。製品の特性に応じたOEM戦略を立てることが、利益率の向上につながります。
生産規模とコスト構造
生産量は、OEMの利益率を左右します。
●大量生産が可能な製品(食品・自動車など):規模の経済が働き、1つ当たりのコストが下がるため、利益率の向上が期待できる
●小ロット生産が必要な製品(高級品・特注品など):単価が高くなるため、販売価格の調整が利益率の維持に直結
生産量を最適化し、市場ニーズに適した製造計画を立てることが、OEMの利益率を安定させるカギになります。
OEMメーカーの選択と契約条件
OEMの利益率は、契約条件によっても変動します。
●ロイヤリティ
●最低注文量
●納期と品質保証
交渉力のある企業は有利な条件を引き出しやすく、OEMのコスト削減につながります。
また、不良品が多いと、補償にかかる費用で利益が減る可能性があるため、契約内容を慎重に検討する必要があります。
研究開発とブランド戦略
新しい技術や成分の研究開発に投資することで、OEMの利益率を向上させることが可能です。
●独自技術の開発:競争力のあるOEM製品を提供し、差別化につなげる
●ブランド価値の向上:高品質なOEM製品を供給することで、取引先との長期的な関係構築に役立つ
研究開発の強化は、OEMの収益力を高める重要なポイントになります。
原料価格の変動
原料価格の変動は、OEMの利益率に直接影響を与えます。
●化粧品・食品業界:原材料の品質や供給状況が利益率を左右する
●包装材・輸送コスト:原油価格の変動が影響
●農作物・金属資源の価格変動:仕入れコストの増加に直結
原料費が上昇した際、OEM事業者はコストを吸収するか、販売価格に転嫁するかの判断が求められます。安定した利益率を確保するためには、複数の調達先を確保し、契約の安定性を重視することが重要です。
利益率をあげるポイント
OEMで利益率を向上させるためには、製品開発から販売戦略まで、計画的な改善が求められます。生産効率の向上や品質管理の強化など、具体的な施策が収益性を左右します。
ここでは、OEMの利益率を向上させるための重要なポイントを解説します。
生産効率の向上
OEMの利益率を高めるには、生産プロセスを見直し、効率化を図ることが重要です。
●自動化や省力化の導入:製造コストを削減し、利益率の向上に貢献
●生産スケジュールの最適化:無駄な在庫やロスを防ぐ
●需要予測を活用した生産計画:余剰在庫を削減し、キャッシュフローを改善
生産体制を最適化することで、長期的に安定した利益率を確保できます。
品質管理の強化
OEMの利益率を維持するためには、品質管理を強化し、不良品や返品を減らすことが不可欠です。
●製造工程での品質チェックの徹底
●厳格な検査基準の導入
特に化粧品や食品などの消費者向け製品は、品質の信頼性がブランド価値を高める要素です。高品質な製品を提供すれば、リピート購入やブランドロイヤルティの向上につながり、結果的に利益率の改善につながります。
コスト削減の最適化
OEMの利益率を維持するためには、品質管理を強化し、不良品や返品を減らすことが不可欠です。
●製造工程での品質チェックの徹底
●厳格な検査基準の導入
特に化粧品や食品などの消費者向け製品は、品質の信頼性がブランド価値を高める要素です。高品質な製品を提供すれば、リピート購入やブランドロイヤルティの向上につながり、結果的に利益率の改善につながります。
コスト削減の最適化
コスト削減は、OEMの利益率を高める基本施策の1つです。
●原材料費・物流費・人件費の見直し
●複数の供給元を比較し、安定したコストパフォーマンスの高い選択肢を確保
例えば、包装資材の簡素化や再利用可能な素材の導入により、コスト削減と環境配慮を両立できます。コスト管理を徹底することで、利益構造の改善につながります。
ターゲットとコンセプトの明確化
利益率を向上させるためには、ターゲット層や製品コンセプトを明確にすることが不可欠です。
●消費者ニーズを的確に把握し、適切な製品を提供することで販売単価を向上
●エコフレンドリーな製品など、高価格帯での販売が可能な市場を狙う
明確なコンセプトを立てることで、競争優位性を確立し、ブランド価値を高められます。
競合他社との差別化戦略
競合他社との差別化は、価格競争を避け、利益率を向上させるために重要です。
●競合他社にはない独自の価値を製品に付加(デザイン・機能・サービスの強化)
●特許技術やパーソナライズ化された製品の導入
例えば、特許技術を活用した製品はプレミアム価格で販売可能です。こうした差別化施策により、OEMの利益率向上を実現できます。
高価格帯商品の開発
OEMの利益率を向上させるには、高価格帯の商品開発が効果的です。
●高価格帯の商品は原価率が低く、収益性が高い ●ターゲットを高所得者層やプレミアム市場に設定することで、ブランド価値を向上
例えば、高級スキンケア製品や限定生産の商品は、高価格でも需要があるため、利益率を高めやすいです。デザインやパッケージにこだわることで、消費者の購買意欲を刺激し、ブランド価値をさらに高めることが可能です。
まとめ
OEMの利益率は、製品の種類や生産規模、契約条件、コスト管理など複数の要因によって左右されます。利益率を向上させるためには、生産効率の向上や品質管理の徹底、ターゲット戦略の最適化、競合他社との差別化が不可欠です。さらに、高価格帯商品の開発やコスト削減の工夫も重要なポイントになります。これらの施策を戦略的に実施することで、OEM事業の収益性を高め、持続的な成長につなげることが可能です。